百姓久作の娘お光は、父の計らいにより、奉公先から戻った義理の兄久松と結婚することとなり、いそいそと祝言の支度をする。しかし久松は奉公先の娘お染と恋仲であり、お染は久松を追ってくる。久作はお光を久松と結婚させたいがため、久松とお染を納得させる。しかし、二人が死ぬ覚悟であることを見抜いたお光は、尼になる事で身を引く。ほのぼのとした笑いあり、涙ありの人情味溢れる演目です。
雨・雷を操る通力を持つ鳴神上人は、美しい姫の詞巧みな話術により通力を奪われ、怒った鳴神は雷となって姫を追いかける。歌舞伎十八番の内の一つで、ぶっかえり(衣装の肩にある縫い目の糸を引き抜くことにより、腰を中心に上半身の衣装が裏返しになり、大きく性格が変わる・正体を顕すといった意味がある)や飛び六法などがある、荒事らしい演目です。
封印切:大坂の飛脚屋の養子である忠兵衛は、恋人の遊女・梅川を身請けしたいあまり、思わず店から預かった金子の封印を切ってしまう。公金横領は死罪であり、心中を決意した二人は忠兵衛の故郷新口村へ落ちて行く。新口村:雪の降りしきる中を故郷新口村に辿り着いた忠兵衛と梅川。そこへ忠兵衛の父・孫右衛門が通りかかり、薄氷に足を滑らせ転倒してしまう。孫右衛門を見かね、梅川は走り寄って介抱をするが、他人とは思えぬ手厚い介抱にすべてを察した孫右衛門は、息子の身代わりで入牢している養母の義理ゆえ、息子に会えないことを伝える。そこで梅川は苦肉の策として、孫右衛門に目隠しをして忠兵衛に会わせる。しかし、その時追手の太鼓の音が聞こえ、別れを惜しむ間もなく、孫右衛門は二人を裏道から逃がす。
江戸城の正月嘉例の鏡開きに先立ち、女小姓の弥生は獅子の舞を演じる。舞にのめり込むうち獅子の精が乗り移り、祭壇の手獅子を取り上げると、手にした獅子頭が飛び交う蝶を追って動き出す。勢いのついた獅子頭は弥生を引き摺り、蝶を追っていずこへともなく消え去る。胡蝶の精が現れ牡丹の花と戯れるように舞う。静けさが戻ったあと勇壮な獅子の精が現れ、長い毛を豪快に振り立て舞い狂う。
能の『安宅』をもとにして松羽目物(まつばめもの)として脚色した演目。源平合戦ののち、兄源頼朝に誤解を受けた源義経は、弁慶らと共に山伏の姿に身をやつし北陸路を落ちていく。その途中、加賀国安宅の関にさしかかった時、関守の富樫左衛門に見咎められる。弁慶は富樫の問答にすらすらと答え、無事通過しようとするが、強力姿の義経を見つけた富樫が刀に手をかけてとどめる。弁慶は最後の手段と主君を打擲し、富樫はそれが策略と気付きつつも、弁慶の忠節に心打たれて一行を通す。
熊谷直実の陣屋で、妻の相模は息子・小次郎の身を案じ、夫の帰りを待っている。そこへ帰ってきた熊谷は、相模に小次郎のことを話すうちに、敦盛を討ちとったことを告げる。それを聞いた藤の方が、悲憤のあまり「わが子の仇」と、熊谷に斬りかかる。しかし、敦盛の首級(しるし)として首実検に供されたのは、熊谷の子小次郎の首であった。驚愕する相模と藤の方を「一枝を伐(き)らば一指を剪(き)るべし」と記された制札で押さえる熊谷。敦盛を助けよとの内意を熊谷が見事に察知し遂行したことを知った義経は「よくも討った。敦盛の首に相違ない。この首にゆかりの人もありつらん。見せて名残を惜しませよ」と声をかける。熊谷は義経に暇をもらい、名を蓮生と改め出家し、相模を伴って西方弥陀の国へと旅立つ。
能の「翁」を歌舞伎化したもので、五穀豊穣を祈る儀式性をもっている。様々な三番叟の中で、むすめ歌舞伎では「寿式三番叟」を上演しており、三番叟を人形に見立て箱の中から取り出し、人形遣いが操るという趣向になっている。儀式的な荘重さを持ちつつ軽快な振り付けが施されている演目です。